日语文学作品赏析《薬》

日语文学作品赏析《薬》

どき多くの狗に遇ったが吠えついて来るものもない。天気は室内よりもよほど冷やかで老栓は爽快に感じた。何だか今日は子供の昔に還って、神いぬあじんづう通を得て人の命の本体を掴みにゆくような気がして、歩いているうちにも馬鹿に気高くなってしまった。行けば行くほど路がハッキリして来た。行けば行くほど空が亮るくなって来た。

老栓はひたすら歩みを続けているうちにたちまち物に驚かされた。そこは一条のていじがい丁字街がありありと眼前に横たわっていたのだ。彼はちょっとあと戻りしてある店の軒下に入った。閉め切ってある門に靠れて立っていると、身体が少しひやりとした。 「ふん、親爺」

「元気だね……」

老栓は喫もたびっくり驚して眼を□った時、すぐ鼻の先きを通って行く者があった。そのみは

うち中の一人は振向いて彼を見た。かたちははなはだハッキリしないが、永く物に餓えた人が食たべもの物を見つけたように、攫み掛って来そうな光がその人の眼から出た。老栓つか

は提灯を覗いて見るともう火が消えていた。念のため衣套をおさえてみると塊りはまだそこにあった。老栓はかしら頭を挙げて両側を見た。気味の悪い人間が幾つも立っていた。三つ二つ、三つ二つと鬼のような者がそこらじゅうにうろついていた。じっと瞳を据えてもう一度見ると別に何の不思議もなかった。

まもなく幾人か兵隊が来た。向うの方にいる時から、著物の前と後ろに白い円い物が見えた。遠くでもハッキリ見えたが、近寄って来ると、その白い円いものは法被の上の染め抜きで、暗すはっぴあんこうしょく紅色のふちぬいの中にあることを知った。一時足音がざくざくして、兵隊は一大群衆に囲まれつつたちまち眼の前を過ぎ去った。あすこの三つ二つ、三つ二つは今しも大きな塊りとなって

くと、突然立ち停まって半円状にうしお潮簇のように前に押寄せ、丁字街の口もとまで行むらがった。

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